声楽曲のスタジオ録音動画|シューベルト「野ばら」

MIX

岩崎将史です。

作編曲、サウンドプロデュース業をフルハウスという会社でやってます。
音大でも教えたりもしています。

今回は「声楽」の録音を動画にしてみましたので、少し解説します。

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歌唱・演奏は現役の音大生

歌唱は愛知教育大学で声楽を学んでいる岡安菜月さん。
ピアノ伴奏は同大学の小笠原彩乃さんにお願いしました。

コンクール審査用の録音相談のお電話を頂く

お二人と出会ったのは2ヶ月ほど前。
ネットで検索してきたのだと思いますが、スタジオにお電話を頂きました。

岡安菜月さん
岡安菜月さん

コンクール審査用に録音をお願いしたのですが、できますか?

岩崎
岩崎

もちろん、できますよ〜。楽しみです。

最初は「大学の練習室で」という案も頂きましたが、スタジオで録音した方が音も良いし安くできるので、スタジオ録音をご提案させて頂きました。

2時間で3曲の録音とCDプリント

コンクール用の録音は何の問題もなく、2時間で3曲ほどの録音をしてマスターCDをお渡しして終了したました。コンクールの場合は編集禁止ですので、2~3テイクの録音して、一番良いものを選んでCDにプリントするだけ、という作業。
録音機材を運搬してセットして、という作業も必要ないのでスタジオの方が早く安くできます。

岡安さんと小笠原さんは、基礎もしっかりしていて、とても演奏でした。
が、何よりも自費でスタジオを使い、コンクール用の録音をしっかりと作ろうという姿勢がよく、電話やメールでの受け答えもとてもしっかりしていました。

彼女達に動画づくりを手伝ってもらえたら嬉しいな、という事で、録音終了後に「今度、ぜひ動画を作らせてください〜」と僕からお願いをさせていただきました。

クラシックの動画を作りたい

なんで声を掛けたかと言うと、クラシックの録音作品を動画化できる機会が僕の場合、全くないからなんです。
クラシック録音は毎月の様にスタジオやホールで録音に携わっています。
が、なかなかYouTube化までという案件が、ほとんどないのです。

特に声楽案件はこれまでもほぼ皆無なので、録音動画を作らせてくれる生贄歌手を探していました(笑)

そんな感じで、クラシックの録音動画を作ってみたい方、随時募集中ですのでお問い合わせください。
是非、一緒に遊びましょう。

半日で6曲を録音撮影

その後、改めて岡安さんと小笠原さんに、半日ほどスタジオに足を運んで頂きまして、6曲を録音撮影しました。
全てを動画化するかは未定ですが、まずは1曲目の動画ができましたので公開します。

シューベルト 歌曲「野ばら」

シューベルトの歌曲「野ばら」です。

ゲーテの原詩で、シューベルトの初期の傑作と呼ばれています。
同じくシューベルトの「魔王」と言えば、知っている人も多いと思います。

余談

先日、僕の次女が「今日は学校に行きたくない」と突然に言い出しました。
理由を尋ねると「魔王」の鑑賞会の日だったようで、「怖い」と…。

それでは、動画をご覧ください。

Schubert: Heidenröslein (Goethe) シューベルト: 野ばら(ゲーテ)
シューベルト 歌曲「野ばら」

今回の録音について、少しだけ解説します。
僕の考え方ややり方なので、人それぞれで答えはない世界です。
それだけに面白いのですが、何かの参考になれば幸いです。

クラシックは全員が同じ部屋で演奏しての録音

クラシック録音の場合は、よほど特別な理由がない限りは「全ての楽器を同じ部屋で演奏」します。
今回の動画も同じ部屋で演奏してもらっています。

ポピューラー音楽の場合、いくつかの部屋(ブース)に別れて、ヘッドフォンをつけて録音するというのが普通ですし、コンサートでもPAと呼ばれる電気音響を使うことが前提です。

クラシック音楽が誕生した当時は、そんなシステムはなく、コンサートも一つの空間で生の声や楽器音を直接オーディエンスに届けます。
演奏者どうしも直接お互いの音を聴きながら表現していきますので、スタジオでも普段と同じ様に演奏して頂く、と言うのを基本に考えています。

コンサートと違い向かい合っての演奏

通常、コンサートでは歌手はオーディエンスの方を向きますので、ピアニストに向かう配置にはなりません。
が、録音ではオーディエンスがいるわけではないので、動画のように向かい合って演奏することを薦める場合が多いです。

お互いのアイコンタクトがしやすく、音を聴きやすく、コミュニケーションが取りやすく、息が合わせやすい
演奏に集中できる状況で、以下に良い音で録音できる適切なマイクポジションを見つけるか、というのを大切に考えています。

全く異なるマイキングテクニック

そのため、ポピュラー音楽のマイキングとは全くと言うと語弊がありますが、クラシック作品の場合は、かなり異なる考え方をています。

一つの空間でどうやって複数の楽器の位相とバランスを正しく録るか」と言うことを中心に考えていますが、普通は「向かい合って」と言う時点で逆位相の音となりますので、サウンドが濁りそうに感じてしまいます。

何も考えないと濁ってしまいますが、そうならないよう、むしろプラスに活かすように考えていきます。

メインマイクの選定とポジションが最重要

そのためにはメインマイクの作り方が、まずは最重要だと考えています。

まずは、このマイクだけでもOKというポジションを決めます。
ピアノと歌が最もバランス良く聴こ、かつ位相もパーフェクトなポジションを探します。

そしてマイクロフォンの選定もとても重要です。
今回はB&K4006を選択しました。

これはビンテージマイクで、今は完全に同じ物は手に入りません。
が、DPAという会社になり、同型番を現在も販売しています。

オムニ(無指向性)の超優秀なマイクロフォンです。

DPA 4006

今はB&KからDPAにメーカーは変わっていますが、そのサウンドは引き継がれています。
OMNI (無指向性) のマイクロフォンで、アコースティックサウンドの録音には最高の1本と言えます。
録音エンジニア、音楽クリエイターであれば一生使える、必ず1本は持つべきマイク。

僕のB&K4006は大手音楽出版社のスタジオが1980年代に購入した物で、そのスタジオ時代から使わせて頂き、スタジオ廃館後も引き継ぎ今でも現役です。
40年間に渡りベストマイクの一つして使い続けています。

スポットマイクの設置

バランス調整用に、歌とピアノそれぞれにスポットマイクを設置します。
コンサートホールでのオーケストラの録音などでもポイントポイントに立てますが、使わない時もあったりします。
あくまでも調整補強用という感じです。

ピアノ用スポットマイクにはDPA4021

DPA4021 ステレオペア

ピアノにはDPA 4021 ステレオペアを使ってみました。
僕は他には、U87Ai、DPA4011、R121などを使ったりもします。

ヴォーカル用スポットマイクにU87Ai

U87Ai ステレオペア

歌手用のスポットマイクには、U87Ai を使ってみました。
色々な選択肢があると思うので、特にコレでなければという事はありません。

AKGのC414とかは、僕は絶対に使いたくない人ですが ^^;

兎にも角にも位相に配慮

この時に僕は、各マイクの位相差に最も注意を払います。
下記の図のようなイメージで指向性、角度、距離を計算しながら。

ここを誤ると、本来の意図とは違うサウンド変化が起きてしまい「何かあとで処理を必要とする」自体になってしまいます。
そうならないように計算して設置し、意図したサウンドと違うようであれば再検討します。
まあ、あんまり無いですけど。

録音はProTools HDXへ

マイクのセットアップができたら、あとはProToolsの録音ボタンを押すだけです。
あとは演奏者に委ねるのみ。

今回は動画撮影と合わせとの録音ということで、編集作業は一切なし。
岡安さん達にとっては、前回のコンクール用の録音と曲こそ違えど、プロセスは全く同じですので順調にサクサクと進んでいきました。

録音終了後のProTools HDXの画面

上記のように、何の手も加えずに、メインマイク、ピアノ、ヴォーカルとそれぞれのマイク音声がき記録されていきます。

サウンプリングレートは192Khzにて。ビット深度は、内部処理は32Bitですが、ADコンバータが24Bitですので、記録時の深度としては24ビットとなります。
32ビットのADもボチボチ出始めているので、検討したいですが、、、なかなかのお値段。

もっとスタジオを皆さんに使って頂ければ、そのうち!(笑)

ミックスはヴォリューム調整のみ

ミックスはボリューム調整のみです。
下の写真のように使用プラグインはリバーブのみ。

クラシックの場合は生なので、EQをした時点で演奏の意図とは違うサウンドになってしまっていると考えています。

EQをしない理由

「A=440hz」とした時に(フルハウスのピアノは442Hzですが)、基音と周波数の関係は次のようになります。

音の高さと周波数の関係

低域が多くて音が篭るなぁ」という事で、例えば120Hz以下をEQで下げてしまうと、ピアノ奏者からすると、低域を演奏した時に「????」となってしまいます。
これは僕がピアノ弾きでもあるので、余計に気になるのかもですが。

楽器自体の音色は正しいので(でないとそもそもクラシックの前提が崩れてしまいます)、もし録音時に音に違いがあるのであれば、マイクの選定や位置などに問題があると考えています。

ただし、その場で聴く生の音にも問題があるのであれば、それは部屋や楽器の調整、レイアウトなどを見直します。
そこで良いサウンドが鳴っている」というのは必要条件です。

ボリューム調整は丁寧に

その代わり、という訳ではないですがバランスの調整書き込みは結構丁寧にやりました。
今回の6曲分のミックスは既に終わらせていますが、6曲全部で2時間くらい作業しました。

マスタリングもEQはフラットで

マスタリングEQも今回はフラットにしました。

今回のマスターセット、MANLEYのMASSIVE PASSIVE EQ と SLAM!

いつも必ずそう、という事もないですが、フラットで特に何も問題を感じないので時は触らない、という感じです。

サウンドハウスで詳しく見る

YouTube用に最適化した音量レベルとフォーマットで、SEQUOIAに流し込んでいきます。

YouTubeもマスタリングで結構音が変わる

この段階の作業は、ほとんどの人にはどうでも良い細かい事なのでしょうが、最後のこの処理を正しい方法でやらないと、出来上がった動画を聴くとチクチク感ある音に聴こえてしまいます。
美しくないのとずっと聴いていると耳が疲れてきます。

それだけ聴いてる分には分からないかもですが、聴き比べるとやっぱり違いがあるんですよね。YouTubeと言えども、少しでもスムーズなサウンドにしたいなぁと。

という事で、この辺で。
他の曲の動画も近日中にアップします。

では。


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コメント

  1. […] 僕はポップスの場合はボーカルとピアノを別の部屋でレコーディングします。クラシックの場合は、同じ部屋で録音することが多いです。クラシックを同じ部屋で録音する理由は、声楽曲のスタジオ録音動画|シューベルト「野ばら」の記事でも書いています。 […]

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